立命館大学新聞社
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[憲章をよむ]「憲章は立ち返ることができる原則」 安斎育郎さん

あんざい・いくろう 立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長。本学名誉教授。

今年の7月で立命館憲章は制定から20年。憲章制定の背景について「21世紀 立命館の責務と役割 学園憲章」起草委員会にて委員を務めた安斎育郎さんに聞いた。(聞き手・矢野)

憲章制定に携わってきた安斎さん(安斎科学・平和事務所提供)

■不安定な時代に 

 1990年代から2000年代にかけてバブルがはじけ、先行きが見えないことで不安感が世の中を覆った。その中で、立命館も21世紀に向け新たな出発をするという社会情勢の中にあり、当時の川本八郎理事長の発案により立命館憲章は作られた。

 当時、自由な議論がなされても大丈夫な雰囲気であった。憲章は起草委員会内においてみんなで議論した上で反対があったわけでもなく決まった。

 今後、複雑な世の中でどのような状況に置かれても絶えず憲章に立ち返れば問題の解決、原則的な立場を貫けるものを定めようというのが当時の思いである。

 教学理念がある上で、なお憲章を作るというのは決まりを二重に作るような感じがする。しかし、教学理念は研究教育をどのような考え方でやっていくかという原則を理念としているが、憲章は強制力の強いものである。原理や原則とかいろんなことはあるが、憲章というのはかなり重く、日本でいう憲法のようなものだ。

 問題が起こったならば、いつもそこに立ち返ることができる原則ができたということだ。憲章を重視して、書いてあることと今大学の直面している社会状況とを比べ、文言を見直そうというのは、憲章が無視されていないという証拠でありいいことである。

■ミュージアムの役割

 国際平和ミュージアムの運営に携わってきたが、このミュージアムは世界初の大学が設立した総合的な平和博物館であり、平和と民主主義という教学理念があればこそできたものである。

 戦争の痛苦を直接、味わった人が減りつつあるというのは客観的な事実である。だからこそミュージアムでは、個人の記憶が社会的記憶として記憶されていくことが重要だ。

 日本においては被害の観点から戦争を展示している博物館が多いが、その一方では1930年代からアジア侵略をしていたという加害の歴史を展示している博物館は比較的少ない。被害と加害の両面が社会的記憶として保全されているというのは重要である。

 国際平和ミュージアムは日本と世界の平和博物館運動に尽くしてきており、中核的な役割を果たしてきた。日本が痛苦の戦争を味わっただけでなく、味わわせたという加害の歴史を忘れてはいけない。

■憲章のこれから

 状況に応じて憲章を見直すのは当然あっていいことである。今後の新しい大学運営をしていく原則を立て直しいいものにするために、より議論を活発にすることは大切だ。議論が起こるということ自体が大事である。この大学が持つミュージアムの位置づけや在り方が引き続き、維持、発展されるような憲章の落ち着きどころを期待している。

 世界に先駆けて国際平和ミュージアムを作った大学として世界に知られている。今後の世界には平和共存が大事。その核となる社会教育施設を持ち、戦争体験者が消えゆく中で社会的記憶を保全しようとしている国際平和ミュージアムを(学生には)生かしてもらいたい。