[立人] 熟議重視 議論続けた 吉田元総長が瑞宝重光章
「日々こつこつと」。学校法人立命館の元総長・吉田美喜夫さんが大事にしている言葉だ。研究者を志した原点の精神でもある。1968年、研究者の道に進むことは全く考えずに立命館大に入学した。しかし、大学紛争により大学の建物が破壊され、授業や試験がなくなった。
「せっかく入学したのに」と充足されない思いを抱いた。ただ、この状況を前向きに捉えた。嘆いても仕方がないと気持ちを切り替え、「大学を使い切る」という心持ちで図書館や生活協同組合を徹底的に利用した。落ち着いて勉強できなかった悔しさから大学院進学を決意し、研究者を志した。
教育への長年の貢献を受け瑞宝重光章を受章した吉田さん教員時代は、学生に労働法を教えていた。日々、学生と関わる中で自発的な若者が多くいることに気付き、若者への希望を持ち続けたいと思うようになる。
総長に就任後は、民主的な運営と国際化を方針として掲げた。グローバル教養学部の設置を巡っては、何カ月も議論を重ねた末に設置を決断。「熟議」を重んじ、常に十分に議論することを意識し続けた。
学費問題は、経営の存続と学生の負担が関わる重い判断だった。在任中、熟議し最終的には学費を上げないという判断を下した。しかし、学費は「安ければよいというものではない」。大学教育と研究の質を維持するために値上げが必要な場合もあると考えている。
建学の精神「自由と清新」と教学理念「平和と民主主義」も重んじた。かつて立命館が戦争に協力した過去に鑑み、教学理念に基づいた教育と研究を目指した。
「立命館憲章」の改正案では、当初案において戦争の痛苦への言及が削除されていた。「立命館憲章は戦争という経験を含む歴史を踏まえて制定されたものであり、この点について改正するという決断をしてはならない」と強調する。
(矢野)