立命館大学新聞社
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クマ被害 史上最悪 問われる対応と共存の未来

今年4月から11月のクマによる被害者数は史上最悪の230人を記録。クマ被害が社会問題化する中、各地で対応が急務となった。クマが人間の生活圏へ迫る今、有効策とは何か。行政や猟友会、識者に話を聞いた。

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「何からどうしたら良いのか」。京都府南部の木津川市の担当者は不安を漏らす。今年5月、市内でクマが初めて目撃され、市民に戸惑いが広がった。市はごみを屋外に放置しないことや庭先の果樹を収穫するなど、クマを寄せ付けない対策を可能な範囲で市民に要請している。

クマの目撃情報が多数寄せられた梅谷地区=3日、木津川市梅谷

京都市は現状を共有するため、初となるツキノワグマ対策連絡会議を開き、捕獲おり10台の追加購入を決めた。市の担当者は「地域の方から要望を受け、おりを設置している。餌付けしてクマを誘引してしまうリスクもあるため、行政だけで積極的に設置することはできない」と説明している。

府内でクマ対応の一翼を担う京都府猟友会では構成員が年々減少。行政に担い手育成への補助金を要望している。「近年では狩猟免許を取得する若者が増えている。取得後のフォローが大切だ」とした。

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野生動物管理について研究する本学政策科学部の桜井良准教授は、今年のクマの大量出没の背景に▽クマの個体数の増加▽クマが餌とするドングリなどの堅果類の凶作▽耕作放棄地の増加などの人間側の変化がクマの生息範囲を拡大させたこと――があるとしている。

桜井良准教授

近年のクマに関する報道について「専門家を呼び、時間を掛けて科学的知見を提供する内容も増えてきた。報道の影響で社会的に『クマリテラシー』が高まっているかもしれない」と分析。警察によるライフル銃の使用や、自衛隊による箱わなの運搬などの後方支援の政策は「短期的には最善策かもしれないが、長期的には野生動物管理の専門家を育成すべき」と主張した。

桜井准教授によると、米国には教育プログラムとして「ワイルドライフ・マネジメント (野生動物管理学)」を学べる大学が多く、行政側もそこで学んだ人材を専門職員として雇うなど、教育と雇用の両面で環境が整備されているという。「こうした制度設計を日本も参考にすべき」と指摘する。

「クマが増え、人間とのあつれきが生じている以上、対策は必須だが、クマが生息できる豊かな自然が残っていることは評価できるだろう」とコメント。「クマ問題は、人間が野生動物との共存の在り方を再考する重要な機会だ」と述べた。

(金井、国島、松山、室山)